アクタージュ act-ageのすすめ、あるいは夜凪と千世子についてのポエム
TUTな皆様こんにちは。これは2019 TUT AdC 8日目の記事です。
adventar.org
概要
本記事では、漫画「アクタージュ act-age」をお勧めします。
女子高生"夜凪景"が役者をする話です。
漫画の魅力が伝わる一番の方法は、その作品を読むことなので、適当なサービスで1話、ないし1巻を読んで頂けると嬉しいです。
以下では、主要キャラクター2名について、若干のネタバレを含みつつ紹介します。
なんとなーくでも読みたくなって頂ければ。
天才、あるいは本物について
主人公"夜凪景"は天才と紹介されている。その才能は演じること。シーンに合った"過去の感情"を思い出し、それを再現する才能に恵まれている。
そのため、彼女の演じる"彼女"は、いつかの彼女のであり、いつでも彼女なのである。彼女が一端"彼女"になれば、そこには架空、思い出だった人物が現れるのだ。舞台の上のキャラクターを実在のものとする演技において、これほど強力な才能は無い。
その意味で、彼女は確かに才に恵まれている。フィクション作品において、才能に恵まれたキャラクターは多い。 羽川翼の学力、田中あすかの演奏力、折木奉太郎の推理力、などなど。彼ら彼女らの持つ"力"は絶対的なもので、とても強い。その力の差から、彼らこそが"本物"であるとする言が作中で述べられることも多い。 才のある者が本物で、無い者が偽物であると。
その意味で言っても、"夜凪景"は本物である。同じ本物にしか通用しないほどの繊細な、しかし絶対的な演技力を持つ。 僕ら読者が求める、フィクションの"本物"と同じように、突出して強く、歪である。彼女の演技は逃避で培われたものであり、幼い妹から"怖い"とさえ言われるほどに生活に根付いた技能なのだ。
しかし、別物であるはずの彼女が表現する感情は、紙面を通じて我々に訴えるものがある。なぜか。 彼女は普通の人だからである。普通のことで悲しみ、普通のことで喜び、普通のことが分からない、普通の人だからである。 彼女の演じる感情は、いつかの彼女である。その心には本物と偽物の違いはない。だから、伝わる。
彼女の演技が見られること、それこそが「アクタージュ」の魅力の一つであるように思う。
天使、あるいは人間について
ライバル"百城千世子"は天使と紹介されている。彼女もまた役者である。夜凪景が原石なら、"百城千世子"は完璧にカットされたダイヤである。 夜凪景が、かつての彼女を演じるように、"百城千世子"は、観客の見たい彼女を作る。
千世子の"天使"という肩書は、そのスター性を指して言われる。作中で彼女は大変な人気女優である。しかし、その人気は彼女の"キャラクターを演じる努力"によって支えられている。 大衆のための役者。彼女が徹底的に作り込んだ、大多数に受け入れられるための仮面こそが"天使"である。
感情を表現する夜凪景に対して、観客の見たい顔を作る百城千世子は、偽物である。少なくとも、心の表現者としては偽りの者だ。 しかし、その偽物の仮面によって彼女はトップに上り詰めている。"天使"の美しさの前では、並みの演者が飲み込まれてしまう。 それほどまでに洗練された技術である。大衆の受け入れるもの、その究極の偽物である。
彼女の仮面は天性の物ではない。素の自分がスターたりえないと知っているからこそ磨いた後付けの武器だ。 故に、すべてをねじ伏せるだけの"天使"としての力を持っていたとしても、彼女は自身を本物として扱わない。 しかし、彼女を形作る"天使"を生み出した根本、その大本は、夜凪景と変わらぬ本物であり、僕らと同じ人間だ。
彼女の演技が見られること、それこそが「アクタージュ」の魅力の一つであるように思う。
まとめ
ということで、漫画「アクタージュ」は魅力的です。ぜみ読んでね!
最新刊まで読み終わったら、スタジオ大黒天のwebページとか見るといいと思います!
リアルタイムで追いかけてるとこういうの楽しいですよね。
次は……全然埋まってない! けどきっと誰か書いてくださると思います!!
蛇足
「やがて君になる」完結おめでとう! これも、とても心揺さぶられる漫画です。おすすめ。
